仕事が覚えられない新人へ|記憶に頼らない覚え方と聞き直し方

仕事が覚えられない新人へ 記憶に頼らない覚え方と聞き直し方

悩める会社員

入社して数か月がたちますが、教わったことを翌日にはほとんど忘れています。同じことを何度も聞いてしまい、先輩の顔が曇るのが分かります。「覚えが悪いね」と指摘されてから、質問するのも怖くなりました。自分は仕事に向いていないのでしょうか。

どらすた

覚えられないことで、ずいぶん自分を責めてきたのですね。実は、覚えられない原因は記憶力だけではありません。教わり方や職場の環境によって、忘れやすくなる場面は誰にでもあります。今日は、覚えられない原因の分け方、「覚える」から「引き出せる状態を作る」への切り替え方、2回目に聞くときの言い方、そして自分を責めすぎない考え方まで、順番に整理します。

この記事では、メモの取り方そのものではなく、仕事が頭に残らないときの原因の分け方と、記憶に頼らずに仕事を回す仕組みの作り方を扱います。教えてもらえない状況や、何がわからないかわからない状態の質問の仕方は、別の記事にゆずります。以下に出てくる会話や状況は、説明のための例です。自分の職場に置き換えて読んでください。

仕事が覚えられないとき、まず原因を分けて考える

「覚えられない」と一言でまとめてしまうと、全部が自分の能力の問題に見えてきます。けれど、実際には原因がいくつかに分かれることが多く、原因によって打てる手も変わります。ここでは、新人によくある四つに分けてみます。

一度に教わる量が多すぎる

新人研修や配属直後は、短い時間にたくさんの情報が入ってきます。業務の手順、社内の用語、ツールの操作、人の名前。これらを同時に処理すると、頭の中では全部が中途半端にしか残りません。これは記憶力が低いのではなく、一度に入る量が上限を超えているだけです。

全体像がないまま、手順だけを聞いている

「この画面でここを押して、次にこれを入力して」と手順だけを聞くと、一つひとつがバラバラの暗記になります。何のための作業なのか、前後にどんな仕事があるのかが分かっていないと、手順の意味がつかめず、翌日には抜け落ちやすくなります。理由とつながりがある情報は残りやすく、つながりのない情報は消えやすいのです。

緊張していて、そもそも聞き取れていない

先輩の説明を聞いている間、「ちゃんと理解しなきゃ」「変なことを聞かれたらどうしよう」と気を張っていると、頭の容量が緊張に使われます。うなずきながら聞いていても、実は半分しか入っていないことがあります。覚えていないのではなく、最初から十分には受け取れていない状態です。

似た業務が混ざっている

同じような申請書が二種類ある、似た名前の取引先が複数ある、というように、似たものが並ぶと記憶は混ざります。ベテランは違いを無意識に判別できますが、新人は違いの基準をまだ持っていません。混ざるのは自然なことです。

悩める会社員

全部当てはまっている気がします。どれから手をつければいいですか。

どらすた

全部当てはまっていても大丈夫です。原因を分けるのは、自分を裁くためではなく、手の打ち方を選ぶためです。次の章で、原因が何であっても使える考え方を紹介しますね。

「覚える」をやめて「引き出せる状態を作る」

仕事で大切なのは、頭の中に全部入っていることではありません。必要なときに、必要な情報を取り出せることです。経験の長い人でも、細かい手順は資料を見ながら進めていることがよくあります。新人のうちは、記憶に頼る割合を減らして、取り出せる仕組みを増やすほうが現実的です。

ここでは、特に効果が出やすい三つの方法を紹介します。メモの取り方の技術そのものは、仕事で差がつくメモの取り方で詳しく扱っているので、ここでは何をまとめておくかに絞ります。

手順書を自分用に作る

会社の公式マニュアルがあっても、新人には情報が多すぎたり、前提知識が抜けていたりします。そこで、自分が実際に作業したときの流れを、自分の言葉で書き出します。完成度は低くて構いません。次の流れで作ると続けやすくなります。

  • 作業を教わったら、その日のうちに、思い出せる順番で手順を書く。
  • 画面の名前、ボタンの位置、入力する項目など、つまずいた点にはひと言添える。
  • 次に同じ作業をするとき、その手順書を見ながら進める。
  • 見ながらやって足りなかった点を、その場で書き足す。

手順書を見ながら進めることは、ズルではありません。書き足しながら育てていくうちに、気づけば見なくても進められる部分が増えていきます。覚えようとして覚えるのではなく、使ううちに残る、という順番です。

業務の地図を作る

全体像がないと手順が点で散らばる、という話をしました。そこで、自分の部署の仕事の流れを、一枚の紙に簡単にまとめておきます。たとえば、次のような内容です。

  • 仕事が誰から来て、自分が何をして、誰に渡るのか。
  • 自分が担当している作業が、全体のどこにあたるのか。
  • それぞれの作業で、困ったときに聞ける人は誰か。

きれいな図でなくて、矢印と箱で十分です。地図ができると、新しい手順を教わったときに「地図のここの話だ」と置き場所が決まります。置き場所があると、情報は迷子になりにくくなります。地図が書けないところは、まだ全体像が見えていない部分です。そこを先輩に聞くときの材料にもなります。

判断の分かれ目だけを覚える

すべての手順を暗記する必要はありません。覚えておきたいのは、「ここで判断が分かれる」というポイントだけです。たとえば、金額によって承認者が変わる、取引先によって書式が違う、期限が近いものを先にする、といった分かれ道です。手順そのものは手順書に任せて、分かれ道だけを頭に置いておく。そう決めると、覚えることが一気に減ります。

分かれ道は、ミスにつながりやすい場所でもあります。ミスを減らす具体的な工夫は新入社員で仕事のミスばかりのときの記事で扱っています。

悩める会社員

手順書を見ながら仕事をしていると、先輩にまだ覚えていないのかと思われそうで不安です。

どらすた

その不安はよく分かります。最初に「自分用の手順書を作って確認しながら進めています」と一言伝えておくと、誤解されにくくなります。工夫している姿は、覚えが悪い姿とは別のものとして見てもらえることが多いです。

教わる場面そのものを変えて、残りやすくする

覚えられない原因が「量」「緊張」「混ざり」にあるなら、教わる場面の側を少し変えるだけでも、残り方は変わります。先輩に大きく負担をかけずにできる工夫を挙げます。

  • 教わる前に、「今日は何についての説明ですか」と全体のテーマを聞いておく。
  • 説明の途中で、区切りごとに「ここまでは、〇〇ということで合っていますか」と自分の言葉で言い直す。
  • 一度に教わる項目が多いときは、「今日はここまでにして、残りは明日にしても大丈夫でしょうか」と量を区切ってもらう。
  • 似た業務は、教わったその場で「△△との違いは何ですか」と違いを一つだけ聞く。
  • 教わった直後の数分で、手順を書き出す時間を取る。時間が取れなければ、その日の終業前でも構いません。

自分の言葉で言い直すことは、理解の確認になるだけでなく、聞き取れていなかった部分を早めに見つける手段にもなります。緊張で内容が入ってこないときは、ゆっくり息を吐いてから聞くだけでも、頭に入る量が変わることがあります。うまくいかない日があっても、次の機会に一つだけ試せば十分です。

同じことを2回目に聞くときの聞き直し方

引き出せる仕組みを作っても、どうしても聞き直したい場面は出てきます。聞き直すこと自体は悪いことではありません。ただ、聞き方で相手の受け取り方が変わります。ポイントは、「前回聞いたことを自分なりに残している」ことと、「どこが分からないのか」を相手に見せることです。

何も見せずに「もう一度教えてください」と言うと、相手は最初から説明し直すことになります。一方で、自分の手順書や理解を見せると、相手は足りない部分だけを補えばよくなり、お互いの負担が軽くなります。

2回目に聞くときの言い方の例

「前回教わった手順を、自分用にまとめました。この順番で合っているか、確認していただけますか」

「〇〇までは手順書どおりにできたのですが、△△のところで迷っています。ここだけもう一度教えていただけますか」

「同じ内容を聞いてしまってすみません。前回は□□と理解したのですが、今回の案件では違うように見えます。どこが違うのでしょうか」

「ご多忙のところ恐縮です。5分ほどお時間をいただけるタイミングはありますか。聞きたい点は二つに絞ってあります」

例文はそのまま使うのではなく、自分の職場の言葉遣いに合わせて調整してください。聞く前に「何を聞くか」を一度書き出しておくと、緊張していても言いやすくなります。また、聞いた内容はその場で手順書に書き足します。同じ質問を繰り返さないための、いちばん強い方法というより、いちばん続けやすい方法です。

聞きたいことそのものがうまくまとまらないときは、何がわからないかわからないときの質問の仕方が参考になります。

覚えられない自分を責めすぎないための考え方

「覚えが悪い」と指摘されると、自分の価値まで低いように感じてしまいます。けれど、新人が仕事を覚えるのに時間がかかるのは、当たり前のことです。ベテランの先輩も、最初は同じように何度も聞き、何度も間違えてきました。今できていることは、できなかった時期を越えた結果です。

考え方として、次の三つを意識してみてください。

  • 「覚えていない」ことと「仕事ができない」ことは別の話だと切り分ける。
  • 忘れたことを数えるのではなく、手順書や地図に残せたものを数える。
  • 一度に完璧を目指さず、「前回より一つ引き出せた」を成長として見る。

どらすたも、新人時代はミスばかりで落ち込んだ経験があります。そのときに感じたのは、できないことを嘆く時間より、できるようにする仕組みを一つ作る時間のほうが、気持ちを軽くしてくれるということでした。仕事の進みの遅さが気になる場合は、仕事が遅い新人へ向けた記事も参考にしてください。

悩める会社員

工夫してみても、やっぱり覚えられない日が続いたらどうすればいいですか。

どらすた

そのときは、自分の努力の問題として抱え込まず、原因を切り分けてみましょう。睡眠や業務量、教え方の側に原因があることもあります。次の章で確認項目を挙げます。

覚えられない時期は、いつまで続くのか

仕事を覚える速さには個人差があり、職場の業務の複雑さにも差があります。ですから、何か月たてば覚えられる、という目安は一概には言えません。ただ、見る価値のある変化はあります。たとえば、前より質問の内容が具体的になった、手順書を見る回数が減った部分がある、地図の空白が埋まってきた、といった変化です。忘れる量が減っていなくても、引き出すまでの時間が短くなっているなら、前に進んでいます。

月に一度、手順書や地図を見返す時間を取って、前の月からの変化を確認してみてください。変化が見えにくいときは、先輩に「この1か月で、改善した点と課題をお聞きしたいです」と尋ねるのも一つの方法です。外から見た変化を知ると、自分では気づかない進歩が見つかることもあります。

それでも覚えられないときの確認項目と相談先

工夫を続けても状態が変わらないときは、頭の使い方以外の要因を疑ってみる価値があります。次の項目を、責めるためではなく、現状を確認するために見てみてください。

切り分けのための確認項目
  • 睡眠が足りていない日や、寝つきが悪い日が続いていないか。
  • 残業や持ち帰りが続き、休む時間が取れていないか。
  • 担当している仕事の種類や量が、新人としては多すぎないか。
  • 教わるときの説明が、早口、口頭のみ、資料なしなど、受け取りにくい形になっていないか。
  • 教える人が毎回変わり、言うことが違っていないか。
  • 集中できない、気分が落ち込むなどの状態が、仕事以外の場面にも出ていないか。

睡眠不足や疲れがたまっていると、人は覚える力や集中力は落ちます。その場合は、記憶を鍛えるよりも休息を整えるほうが先です。業務量が多すぎるときは、上司や教育担当に、優先順位の相談をしてみてください。教え方が受け取りにくい形になっているときは、「資料をいただけますか」「メールで要点をもらえますか」とお願いするだけで、状況が変わることもあります。

集中できない状態や気分の落ち込みが続く場合、あるいは注意や記憶についての特性が気になる場合は、このブログでは原因を判断できません。会社の産業医や保健師、かかりつけの医療機関などの専門家に相談してみてください。診断を受けるためというより、自分の状態を知り、働き方を調整する手がかりを得るための相談です。

社内で相談しにくいときは、厚生労働省のこころの耳で、働く人向けの相談窓口や情報を調べることができます。

環境の側に原因がありそうなときは、異動の希望を出す、教え方の改善を相談する、環境を変えることも含めて考える、という選択肢があります。続けるか、環境を変えるかは、どちらが正しいというものではありません。自分の心と体を守れる範囲で選んでください。

状況に応じて、次に読む記事

今の状況に近いものがあれば、あわせて読んでみてください。

どらすた

覚えられないことは、あなたの価値とは関係がありません。覚えようと頑張るより、引き出せる仕組みを少しずつ増やしていってください。それでも苦しいときは、睡眠や業務量を見直したり、誰かに相談したりすることも立派な対処です。一人で抱え込まずに、できるところから進めていきましょうね。

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