今回はビジネス用語解説テーマ「イノベーション」についてです。
目次
イノベーションとは?意味をわかりやすく解説
イノベーションとは、これまでのやり方や価値観を見直し、新しい価値を生み出す変革のことです。

イノベーションは、新しい技術の発明だけを指す言葉ではありません。既存の商品・サービス・業務のやり方、あるいは組織の仕組みそのものを見直し、これまでになかった価値を生み出すことを広く指します。「何を発明したか」よりも「その結果、何が変わったか」に主役がある言葉です。
たとえば工場の生産ラインを見直して品質と効率を同時に高めた場合、それは大きな技術的ブレイクスルーがなくても立派なイノベーションと呼べます。逆に、どれだけ画期的な技術を開発しても、それが誰にも使われず社会や市場に変化を起こさなければイノベーションとは呼ばれません。
若手社員が「この報告書のフォーマットを変えたら、確認にかかる時間が半分になった」というレベルの提案でも、それがチーム全体に定着し、実際に働き方が変わったのであれば、規模の小さなイノベーションの一つだといえます。イノベーションという言葉の大きさに構えすぎず、まずは「何が変わったか」で捉えてみると身近な出来事として理解しやすくなります。
新商品を企画する場面では、自社の技術やノウハウを起点にするプロダクトアウトの発想がイノベーションの種になることもあります。ただし技術起点で生まれたアイデアも、最終的に市場や現場に受け入れられて初めて変革と呼べる、という点は忘れないようにしたいところです。
つまりイノベーションを理解するときの主役は、発明そのものではなく「何が起きるか」「何が変わるか」という結果の部分にあります。若手のうちは「自分には大きな発明なんてできない」と感じてしまいがちですが、主役が発明ではなく変化そのものだと捉え直すと、関われる範囲がぐっと広がるはずです。この視点を持っておくと、次に説明する分類も整理しやすくなります。
語源(英語表記)
英語のinnovation(イノベーション)は、ラテン語の「innovare(新しくする)」に由来する言葉です。経済学の分野では、20世紀前半の経済学者ヨーゼフ・シュンペーターが、新しい生産方法や販路、組織のあり方を生み出すことを「新結合」と呼び、経済発展の原動力として位置づけたことでも知られています。
日本語では長らく「技術革新」と訳されてきましたが、この訳語は本来の意味よりかなり狭く、技術以外の変革を含みづらいという指摘があります。実際には business innovation(経営革新)や social innovation(社会変革)のように、技術を伴わない使われ方も一般的です。ビジネスの現場では和訳せず「イノベーション」とカタカナのまま使うのが定着しており、報告書やプレゼン資料でもそのまま用いられることがほとんどです。「技術革新」という日本語だけで覚えていると、業務改善や組織変革の文脈で使われたときに意味を取り違えてしまうこともあるため、注意しておきたいところです。
身近なイノベーションの例
イノベーションと一言でいっても、変化が起きる対象によっていくつかの種類に分けられます。
プロダクトイノベーション
新しい商品やサービスをローンチし、市場に新たな価値を提供することです。既存製品にない機能を加えた家電や、これまでになかったサービス形態のアプリなどが該当します。
プロセスイノベーション
製造工程や業務フローを見直し、コストや時間を大きく削減する変革です。生産ラインの自動化や、承認フローのデジタル化などが典型例です。目に見える商品の変化を伴わないため地味に見えがちですが、削減できたコストや時間がそのまま企業の競争力につながるため、経営層からの評価も高い分野です。
ビジネスモデルイノベーション
商品そのものではなく、収益の得方や顧客との関わり方を変える変革です。所有から利用へと発想を転換したサブスクリプション型のサービスなどが代表例です。同じ商品・技術であっても、売り方や課金の仕組みを変えるだけで新しい市場が生まれることがあります。
マーケティングイノベーション
訴求方法や販売チャネル、価格の付け方を大きく見直し、新しい顧客層を開拓する変革です。
組織・人材のイノベーション
働き方や人材の登用方針を見直す変革も含まれます。ダイバーシティーを推進して多様な視点を取り入れることが、新しい発想を生むきっかけになることも珍しくありません。
社会イノベーション
企業単体の利益を超えて、地域や社会が抱える課題そのものを解決する仕組みを生み出す変革です。福祉や環境の分野で、行政・企業・NPOが連携して新しい仕組みをつくる動きなどが該当します。
ビジネスでの使い方
会議や社内資料では「イノベーションを起こす」「イノベーティブな発想」といった形で使われます。単なる思いつきのアイデアではなく、実際に形にして市場や現場に変化をもたらすところまでを含めて評価される言葉です。
新規プロジェクトの企画書では、そのプロジェクトが会社のストラテジーのどこに位置づけられ、どんな変革を狙っているのかをセットで説明することが求められます。「何を変えたいのか」が曖昧なまま「イノベーティブな取り組みです」とだけ書いても、社内では通りにくいという声もよく聞きます。
社外との協業を伴う場合は「オープンイノベーション」という言葉も使われます。自社だけで抱え込まず、他社や研究機関と組んで変革のスピードを上げる進め方のことです。若手社員が異業種交流会やセミナーで見聞きした事例を社内に持ち帰り、既存の業務のヒントにするといったことも、広い意味ではオープンイノベーションの入り口といえます。
人事評価や採用面接の場面でも「イノベーティブな人材」という言葉が使われることがあります。この場合は、既存のやり方を疑い、改善や変化を自ら提案できるかどうかが評価されている、と捉えておくと理解しやすくなります。
持続的イノベーションと破壊的イノベーション、そして小さな一歩
イノベーションはさらに、変化の起こり方によって大きく2つに整理されることがあります。どちらが優れているというものではなく、企業やプロジェクトの状況によって、どちらのタイプの変革が必要とされているかが変わってきます。
持続的イノベーションは、既存の商品や技術を土台に、性能や品質を段階的に磨き上げていく変革です。自社のコア・コンピタンスを活かしながら着実に改善を重ねていくため、多くの企業が日常的に取り組んでいるのはこちらのタイプです。
破壊的イノベーションは、既存の市場のルールや価値基準そのものを塗り替えてしまう変革です。それまで見えていなかったブルーオーシャンを切り開き、競合がひしめく既存市場の外側に新しい需要を生み出すこともあります。フィルムカメラが主流だった市場にデジタルカメラが登場し、写真の撮り方や楽しみ方そのものを変えてしまったことなどが、この典型例としてよく紹介されます。ただし、狙って起こせるものではなく、結果的にそう呼ばれるようになったケースがほとんどだという点には注意が必要です。
「イノベーションを起こせ」と言われると、何か大きな発明や新規事業を求められているように感じるかもしれません。ですが、日々の業務の中で「もっとこうした方が早い」「この資料はこう変えた方が伝わる」といった気づきを形にすることも、変革の入り口です。現場のニーズを丁寧に拾い、小さな改善を積み重ねることが、結果的に大きな変革につながっていくケースも少なくありません。
なお、社内の改善提案の枠を超えて、新しい事業そのものを一から育てていく話になると、それはインキュベーションという別の考え方が関わってきます。新規事業を育てる仕組みについて詳しく知りたい場合は、そちらもあわせて確認してみてください。
会話例文
類語との違い
発明との違い
発明は「これまで世になかったモノや技術を新しく生み出すこと」自体を指します。イノベーションはその発明が実際に使われ、社会や市場に変化をもたらすところまでを含む点が異なります。発明が起点だとすれば、イノベーションはその先にある結果であり、優れた発明があっても、それが広まらなければイノベーションとは呼ばれません。
改善(カイゼン)との違い
改善は既存のやり方の延長線上で少しずつ質を高めていく取り組みです。イノベーションも小さな改善から始まることはありますが、積み重ねの結果としてやり方や価値基準そのものが大きく変わった状態を指す点で、改善よりも変化の幅が大きい言葉として使われます。逆にいえば、改善を積み重ねた先にイノベーションがある、という関係で捉えておくと実務では扱いやすくなります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)との違い
DXはデジタル技術を使って事業や組織を変革する取り組みを指す、比較的新しい言葉です。手段がデジタル技術に限定される点がイノベーションとの違いです。イノベーションはデジタルに限らず、あらゆる手段による変革を含む、より広い概念だといえます。社内でDXの取り組みが語られるときは、その先に「何をどう変えたいのか」というイノベーションの目的があるはずなので、あわせて確認しておくと話の全体像がつかみやすくなります。
関連用語
イノベーションとあわせて理解しておくと、変革や事業づくりに関する用語の違いが整理しやすくなる用語です。
ほかのビジネス用語はビジネス用語集一覧から探せます。
まとめ
イノベーションとは、技術の発明そのものではなく、商品や業務、組織のあり方を見直し、新しい価値を生み出す変革を指す言葉です。日本語の「技術革新」という訳語だけで捉えると、意味を狭く解釈してしまう可能性があります。主役は発明ではなく、その結果として「何が起きるか」であることを押さえておくと、社内でこの言葉が出てきたときに意味を取り違えずに済みます。
プロダクトイノベーションやプロセスイノベーションのように変化が起きる対象で分けられるほか、持続的イノベーションと破壊的イノベーションのように変化の大きさでも整理できます。どちらの場合も「何を変えるか」が主役であることに変わりはありません。分類を知っておくと、会議で「イノベーティブな取り組み」と言われたときに、それがどのタイプの話をしているのかを見極めやすくなります。
「イノベーションを起こせ」と言われると身構えてしまいがちですが、日々の業務の中の小さな気づきを形にすることも、その入り口です。持続的イノベーションの多くは、現場の小さな改善の積み重ねから始まっています。まずは自分の担当業務の中で、変えられそうなところを一つ見つけることから始めてみてください。
新しい事業を一から育てていく話になった場合は、インキュベーションという別の考え方が関わってきます。イノベーションが「何を変えるか」を扱う言葉だとすれば、インキュベーションは「変革の種をどう育てるか」という仕組みの話です。両者の違いをあわせて確認しておくと、社内での議論をより正確に理解できるようになるはずです。
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