今回はビジネス用語解説テーマ「ターゲット」についてです。
目次
ターゲットとは?意味をわかりやすく解説

ターゲットとは、商品やサービスを届けたい顧客層のことです。マーケティングでは「狙いを定める対象」という意味で使われます。
商品を作るとき、多くの人になんとなく向けて発信すれば売れると考えがちですが、実際には特定の層に向けて発信したほうがメッセージが伝わりやすくなります。誰に届けたいかを先に決めることが、ターゲットという考え方の出発点です。
もともとtargetは英語で「的」「標的」を意味する単語です。弓や射撃で狙いを定める的を指す言葉が転じて、ビジネスでは「狙いを定める顧客層」という意味で使われるようになりました。的を絞るほど矢が当たりやすくなるように、顧客層を絞るほどメッセージも届きやすくなる、というイメージで捉えると理解しやすくなります。
たとえば同じ化粧品でも、「20代前半で初めてスキンケアに関心を持ち始めた人」に向けた商品と、「40代で乾燥や小じわが気になり始めた人」に向けた商品では、パッケージの雰囲気も、使う言葉も、置かれる売り場も変わってきます。ターゲットを決めるということは、こうした「誰の、どんな場面に寄り添う商品なのか」を先に言葉にしておく作業だといえます。
ターゲットを決めておくメリットは、商品づくりの場面だけにとどまりません。広告を出す媒体を選ぶときも、コピーの言葉づかいを決めるときも、価格帯を検討するときも、判断の基準になるのはターゲットです。ターゲットが曖昧なままだと、担当者ごとに前提がずれ、方向性の違う意見が出やすくなります。逆にターゲットが共有できていれば、「このターゲットに向けた表現としてふさわしいか」という一つの物差しで話し合えるようになります。
ペルソナとの違い
ターゲットと混同されやすい言葉に「ペルソナ」があります。この二つは似ているようで、指しているものが異なります。
ターゲットは「層」としてのくくりです。「20代女性」「中小企業の人事担当者」「一人暮らしの学生」のように、共通する属性でひとまとめにした集団を指します。
一方ペルソナは、その層の中にいそうな「一人の具体的な人物像」です。名前や年齢、職業、家族構成、休日の過ごし方まで細かく設定し、実在の人物であるかのように描き出します。たとえば同じ「30代・共働き・子育て中の女性」というターゲットでも、ペルソナに落とし込むと「35歳、都内在住の会社員。夫と6歳の娘と3人暮らしで、平日は時短勤務、休日は家族で公園に出かけることが多い」といった、一人の生活が見えてくる人物像になります。
なぜ二段階に分けるのかというと、ターゲットだけでは企画に関わる人によって思い浮かべる顧客のイメージがずれてしまうことがあるからです。「20代女性」と一口に言っても、学生をイメージする人もいれば、社会人をイメージする人もいます。ペルソナまで具体化すると、チーム内で「この人ならどう感じるか」という基準を共有しやすくなり、商品企画やコピーライティングの精度が上がります。
とはいえ、いつでもペルソナまで作り込む必要があるわけではありません。市場を大づかみに把握したい企画の初期段階ではターゲットの設定だけで十分なことも多く、広告文やデザインなど、より細かい表現を詰める段階になってから、ペルソナに落とし込んで解像度を上げていくという進め方が一般的です。目的に応じて、どこまで具体化するかを使い分けるとよいでしょう。
実務でよくある混同は、「ターゲットを決めた」つもりが、実際には漠然としたイメージのまま話が進んでしまうケースです。「20代女性向け」とだけ決めて満足してしまうと、担当者によって思い浮かべる人物像がばらばらになり、結局ペルソナを描いたときになって初めて認識のずれに気づく、ということも起こります。ターゲットを決める段階から、できるだけ具体的な言葉で書き出しておくことが、後の手戻りを減らすことにつながります。
ターゲットの決め方
ターゲットを決めるときにまず意識したいのは、「絞る」ことです。誰に届けたいかを絞ると、その分メッセージは刺さりやすくなります。逆に、幅広い層に向けて当たり障りのない言葉を選ぶと、結果として誰の心にも強く残らないメッセージになりがちです。
「全員がターゲット」という設定は、実質的にターゲットを決めていないのと同じ状態です
ターゲットを全員に広げてしまうと、訴求ポイントがぼやけ、限られた広告費や制作リソースも分散してしまいます。まず狭く絞り、そこで手応えを確認しながら広げていくほうが、結果的に効率よく成果につながりやすくなります。
ターゲットを絞る切り口には、主に次のようなものがあります。
・属性の切り口:年齢、性別、居住地、職業、年収、家族構成など、デモグラフィックな情報で区切る方法です。もっとも基本的な切り口で、他の切り口と組み合わせて使われることが多くなっています。
・行動の切り口:購買履歴、利用頻度、情報収集の手段、SNSの利用状況など、実際の行動パターンで区切る方法です。同じ属性でも行動が異なれば響く訴求も変わるため、属性だけでは絞りきれないときに役立ちます。
・悩み・ニーズの切り口:抱えている課題や欲求で区切る方法です。「時間がない」「コストを抑えたい」といった悩みを起点にすると、商品のどの価値を伝えるべきかが明確になります。
これらの切り口は一つだけで決めるのではなく、複数を組み合わせて使うのが一般的です。たとえば「30代・共働き」という属性に、「時短で家事を済ませたい」という悩みを重ねることで、より輪郭のはっきりしたターゲット像になります。
実際に決めるときの進め方としては、まず自社の商品やサービスがどんな価値を提供できるのかを整理し、その価値をもっとも必要としていそうな層を、属性・行動・悩みの切り口で書き出してみるところから始めるとやりやすくなります。書き出した候補が複数出てきたら、市場の規模や競合の状況、自社が対応できる範囲などを踏まえて優先順位をつけ、最初に狙う層を一つか二つに絞り込みます。
具体例で考えてみます。オンライン語学学習サービスを提供する場合、属性の切り口では「20代から30代の社会人」、行動の切り口では「通勤時間にスマートフォンで学習する人」、悩みの切り口では「まとまった学習時間が取れず、続けるのが苦手な人」といった候補が挙がるでしょう。これらを組み合わせると、「通勤時間にすきま学習をしたい、20代から30代の社会人」という、輪郭のはっきりしたターゲットが見えてきます。三つの切り口すべてを毎回使う必要はありませんが、こうして複数の視点から候補を出し、重なる部分を確認する作業が、ターゲットを絞り込むうえで役立ちます。
決め方に迷うときは、既存顧客のデータや競合の顧客層をベンチマークとして参考にしながら仮説を立て、実際の反応を見て調整していく進め方も有効です。設定したターゲットに実際に届いているか、反応が薄い場合はどこがずれていたのかを振り返り、必要なら切り口を見直します。ターゲットの設定は一度決めたら終わりではなく、事業のストラテジーの見直しに合わせて、定期的に検証し直すものと考えておくと扱いやすくなります。
数値目標としてのターゲット
ターゲットには、顧客層を指す使い方のほかに、達成すべき数値目標という意味で使われる場合もあります。「今月の売上ターゲットは500万円」「新規登録者数のターゲットを1,000人に設定する」といった使い方です。
この場合のターゲットは、顧客層ではなく「目指す基準」や「到達したい数値」を指しています。コンバージョン率の目標値を「ターゲットCVR」と呼んだり、KPIの達成ラインを「ターゲットライン」と呼んだりするのも同じ用法です。
似た言葉に「目標」がありますが、目標が達成したい成果そのものを指すのに対し、ターゲットは「そこに向けて狙いを定める基準や水準」というニュアンスで使われることが多くなっています。会議で「ターゲットは前月比110パーセント」のように言われた場合は、顧客層の話ではなく、この数値目標の意味で使われていると考えてよいでしょう。
数値目標としてのターゲットは、営業部門の売上目標に限らず、採用担当者が使う「採用ターゲット人数」や、カスタマーサポートが使う「対応時間のターゲット」のように、部署を問わず幅広く使われる言葉です。どちらの意味で使われているかは前後の文脈から判断する必要があるため、会話の中で「顧客層の話なのか、数値の話なのか」を意識しておくと、意味を取り違えずに済みます。
会話例文
・「この商品のターゲットは、はっきり決まっているの?」
・「今回のキャンペーンはターゲットを絞りすぎて、対象者が少なくなっているかもしれない」
・「ターゲットとペルソナ、両方を整理してから企画書を作り直そう」
・「来期のターゲットを達成するには、もう少し施策のペースを上げる必要がありそうだ」
・「ターゲットを変更したら、広告の反応も変わってくるはずだよ」
類語との違い
ターゲットと近い場面で使われる言葉との違いも整理しておきます。
・ペルソナ:前述のとおり、ターゲットが「層」であるのに対し、ペルソナは「一人の具体的な人物像」です。ターゲットを人物レベルまで具体化したものと捉えると整理しやすくなります。「ターゲットは決まったから、次はペルソナに落とし込もう」のように、段階を分けて使われます。
・セグメント:市場全体を属性や行動で分類した「区分」そのものを指す言葉です。「市場をいくつかのセグメントに分けたうえで、どのセグメントを狙うか」を決めたものがターゲットになります。セグメントが分類の枠組み、ターゲットはその中から選んだ対象、という関係です。
・顧客層:ターゲットとほぼ同じ意味で使われることもありますが、顧客層は既存の利用者も含めた広い呼び方であるのに対し、ターゲットは「これから狙って届けたい対象」というニュアンスが強い言葉です。「現在の顧客層を分析したうえで、新しいターゲットを設定する」のように、両方を並べて使う場面もあります。
・目標:数値目標としてのターゲットと意味が近い言葉ですが、目標が達成したい成果全般を指すのに対し、ターゲットは「狙いを定める基準や対象」というニュアンスで使われることが多くなっています。
関連用語
ほかのビジネス用語はビジネス用語集一覧から探せます。
まとめ
ターゲットとは、商品やサービスを届けたい顧客層を指す言葉です。属性・行動・悩みといった切り口を組み合わせて絞り込むことで、メッセージが届きやすくなります。「全員がターゲット」という設定は実質ターゲットを決めていないのと同じであり、まず狭く絞ってから、反応を見ながら調整していく進め方が扱いやすい方法です。
またターゲットは、顧客層だけでなく売上や件数といった数値目標を指す場合もある言葉です。会話の中でどちらの意味で使われているかを見極めることも、意思疎通を円滑にするうえで役立ちます。さらに、ターゲットを一人の人物像まで具体化したものがペルソナであるという関係も押さえておくと、企画やコピーライティングの場面で言葉を使い分けやすくなるはずです。
ターゲット、ペルソナ、セグメントといった言葉は、それぞれ役割が異なるだけで、対立する考え方ではありません。市場をセグメントで見渡し、その中からターゲットを選び、必要に応じてペルソナまで具体化する、という一連の流れとして捉えておくと、実際の企画や打ち合わせの場でも迷わず使い分けられるようになります。
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