悩める会社員
どらすた
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「逃げ」なのか「撤退」なのか、まず言葉を整理してみましょう
「逃げの転職」という言葉には、どこか卑怯なことをしているような響きがあります。「石の上にも三年」のように、辛抱すること自体を美徳とする価値観が根強い分、途中で環境を変える選択には後ろめたさがつきまといやすいのかもしれません。ですが、危険や自分に合わない環境から距離を取る行動は、本来ネガティブなものではなく、状況が悪化する前に動く合理的な判断だと言われています。つまり「逃げ」と呼ばれている行動の中には、実際には「撤退」と呼ぶべきものが少なくないのです。
そもそも、後ろめたさを感じること自体は、悪いことではありません。何も考えずに衝動的な行動を取る人は、多くの場合、自分の選択を疑ったり検索して調べたりはしないものです。後ろめたさがあるということは、それだけ今の状況や自分の選択と真剣に向き合っている証だと捉えることもできます。大切なのは、その後ろめたさに引きずられて動けなくなることではなく、後ろめたさの元になっている不安や迷いを、一つずつ言葉にしていくことだと思います。
心と体を守るための離脱は、逃げではありません
ハラスメントが横行している、長時間労働が常態化している、努力してもフィードバックすら返ってこない。こうした環境に身を置き続けることは、我慢強さの証明にはなりません。むしろ心身をすり減らし、回復に時間がかかる状態を招く原因になります。自分を守るために距離を取る判断は、後ろ向きな逃避というより、傷が深くなる前に手を打つ戦略的な撤退だと捉えて良いはずです。実際、無理を重ねた末に体調を崩してしまうと、転職活動そのものを始める余力すらなくなってしまうこともあります。まだ動ける余力があるうちに離れるという判断は、決して弱さの表れではありません。
「環境が原因」か「どこにでもある問題」かを見分ける
一方で、正直に整理しておきたいこともあります。それは「嫌なことから目をそらすためだけの転職」は、転職先でも同じ壁にぶつかりやすいということです。分かれ目になるのは、今つらいと感じている原因が「今の環境に固有のもの」なのか、「どの会社に行っても一定は存在するもの」なのか、という視点です。特定の上司の理不尽な言動や、業界特有の異常な労働慣行は環境固有の問題である一方、人間関係の摩擦そのものや、仕事に完全なやりがいを求める気持ちは、環境を変えても形を変えて現れやすいものです。たとえば「上司からの人格否定的な発言がつらい」という悩みは、その上司から離れれば解消することが多いですが、「そもそも組織で働くこと自体が窮屈だ」という感覚は、転職先の組織でも同じように顔を出しやすいものです。
もちろん、この二つはきれいに分かれるものではなく、多くの場合はグラデーションの中に自分の状況があります。それでも、今感じているつらさのうち、環境を変えれば解消しそうな部分と、環境を変えても残りそうな部分をおおまかにでも分けて考えてみることは、この先の転職活動の方向性を決めるうえでも役立つはずです。
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つらさの原因を、具体的な事実として説明できるかどうかが一つの目安になります。特定の人の言動や、その職場特有の慣行など、環境を変えれば解消しやすい問題なのか。それとも、仕事そのものへの向き合い方や、対人関係全般への感じ方など、環境を変えても同じ形で現れやすい問題なのか。ここを一度立ち止まって整理しておくと、転職後に「また同じことで悩んでいる」という状況を避けやすくなると言われています。
もう一つの目安は、時間が経ったときにその判断をどう振り返れるかです。数年後に「あのとき環境を変えたからこそ、今の働き方にたどり着けた」と説明できそうなら、それは逃げというより前向きな撤退だった可能性が高いといえます。逆に「あのとき、根本的な原因に向き合わずに済ませてしまった」という感覚が残りそうなら、転職の前にもう少し立ち止まって考える価値があるかもしれません。
「逃げだ」「甘えだ」と言われたときの向き合い方
転職を考え始めると、周囲、特に年上の世代や、我慢して今の環境に留まってきた人ほど「逃げるな」「甘えだ」という言葉をかけてくることがあります。こうした言葉は、時に自分の中の後ろめたさをさらに強くしてしまいます。ただ、こうした声の多くは、悪意から出ているというより、その人自身が同じように我慢を重ねてきた経験に基づいていることが多いと言われています。自分が耐えてきたものを、若い世代が簡単に手放そうとしているように見えると、つい厳しい言葉が出てしまうのかもしれません。それは、その人なりの価値観であって、あなたの状況を正確に見た上での評価とは限りません。
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もし「逃げるな」という言葉に対して何か返す必要を感じるなら、無理に反論する必要はありません。「今の状況を自分なりに考えた結果です」と伝えるだけで十分だと思います。相手を説得することよりも、自分の中で納得できる理由を持っておくことのほうが、この先の選択にとってはずっと大切です。相手が家族であれ上司であれ、最終的にその意見に従うかどうかを決めるのは自分自身であり、意見を聞くことと、その通りに動くことは分けて考えて構いません。
僕が新卒1年で会社を辞めたときの話
ここで少し、僕自身の経験をお話しします。僕は新卒でIT企業に入社し、1年ほどで退職しました。当時の僕は、朝起きるのがつらく、仕事に対して前向きな気持ちをほとんど持てない状態でした。任される仕事の範囲が固定されていて、成長している実感を持てないまま毎日が過ぎていく感覚があり、このまま同じ場所にいても状況は変わらないだろうという思いが強くなっていきました。周囲からは「まだ1年しか経っていないのに」「せめて3年は続けるべきだ」という声もありましたし、傍から見れば、それは典型的な「逃げの転職」に見えていたと思います。自分自身、当時は本当にこれで良いのか、迷いがなかったわけではありません。家族に相談したときも、もう少し様子を見た方がいいのではないかという反応が返ってきたのを覚えています。
それでも僕は、その環境に居続けることが自分にとって良い結果を生むとは思えず、環境を変えるという選択をしました。その後、第二新卒としてベンチャー企業に転職しました。そこでは1社目とは違い、若手のうちから裁量を持って仕事を任せてもらえる環境があり、成果を出せば正当に評価してもらえる実感がありました。任された仕事に試行錯誤しながら向き合う中で、自分でも驚くくらいのスピードで仕事の進め方や考え方が変わっていったのを覚えています。1社目にいた頃には想像もできなかったような裁量で意思決定を任されるようになり、事業を作る側の視点で物事を考える機会も増えていきました。その経験の延長線上で、23歳のときに自分で会社を立ち上げるという選択にもつながりました。振り返ってみると、1社目を辞めるという決断がなければ、2社目での経験も、その先の起業という選択肢も、僕の中には生まれていなかったと思います。
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眠れない、食べられない、そんなサインが出ているなら
ここまで「逃げか撤退か」という見極め方についてお話ししてきましたが、一つだけ例外があります。それは、すでに眠れない、食欲がわかない、涙が止まらない、休日も仕事のことが頭から離れない、といった心身のサインが出ている場合です。このような状態にあるときは、「これは逃げなのか、正当な理由のある撤退なのか」を冷静に考えられる段階ではないと言われています。強いストレスにさらされ続けると、物事を落ち着いて判断する力そのものが落ちてしまうためです。まず優先すべきは、これ以上心身に負荷をかけないことであり、転職が逃げかどうかという問いは、その後で考えても遅くありません。
そうしたサインを感じている場合は、一人で抱え込まず、厚生労働省が運営するこころの耳のような専門の窓口に相談することも選択肢に入れてみてください。働く人のメンタルヘルスに関する情報や相談窓口がまとめられており、今の状態を客観的に把握する手がかりになります。「逃げかどうか」の判断は、心身が落ち着いてからでも遅くありません。まずは休むこと、そして必要であれば専門家の力を借りることを優先してください。転職はいつでも動き出せますが、心身の健康は一度大きく崩すと回復に時間がかかることもあると言われています。
あわせて読みたい記事
ここまで「逃げか撤退か」という視点で考え方を整理してきましたが、実際に次の一歩を考えるうえでは、状況ごとにもう少し具体的な情報が役立つこともあります。今の気持ちが「辞めたい」なのか「逃げたい」なのか、自分でもまだ整理しきれていないという方は、辞めたい気持ちの整理と判断の手順をまとめた記事も参考にしてみてください。また、頭では転職を考えていても、いざとなると動けないという方には、転職が怖くて一歩を踏み出せないときの向き合い方を解説した記事があります。
朝、会社に行くことを考えるだけで気分が沈んでしまうという方は、会社に行きたくない朝の対処法をまとめた記事も役に立つはずです。今の状況を客観的に整理したいという方は、転職すべきかどうかを無料で診断できるコンテンツも用意していますので、あわせてご覧ください。
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