今回はビジネス用語解説テーマ「ユーザビリティ」についてです。
目次
ユーザビリティとは?意味をわかりやすく解説

ユーザビリティとは、製品やサービスを利用する人にとっての使いやすさを指す言葉です。操作のわかりやすさや迷いにくさなど、使う人が感じる快適さ全般を表します。
もともとはソフトウェアやWebサイトなど、IT分野で使われることが多い言葉でした。同じ機能を持つツールでも、操作にすぐ慣れるものと、何度使っても戸惑うものがあります。この差を説明するために生まれたのがユーザビリティという考え方で、機能の多さや性能の高さとは別の軸として扱われる点が特徴です。どれだけ高機能でも、使う人が使いこなせなければ、その価値は十分に発揮されません。近年ではIT分野に限らず、家電や公共施設のサイン、紙の申請書式など、人が何かを操作したり読み取ったりするあらゆる場面でユーザビリティという言葉が使われるようになっています。
語源:usability
英語のusability(ユーザビリティ)は、”使うことができる”という意味を持つusable(ユーザブル)に、性質や状態を表す接尾辞-ityを付けた言葉です。usableはさらにさかのぼると動詞use(使う)から派生しており、ユーザビリティはもともと使用可能である度合いを示す語として使われてきました。そこから転じて、単に使えるかどうかだけでなく、どれだけ快適に使えるかという意味合いで使われるようになっています。
日本語で近い言葉を挙げるとすれば「使い勝手」がもっとも近いニュアンスです。ただし使い勝手という言葉が漠然とした印象で使われることが多いのに対し、ユーザビリティは後述するようにいくつかの観点に分けて評価できる言葉として、Webやプロダクト開発の現場で定着してきた経緯があります。感覚的な言葉として片づけず、要素ごとに分解して考えられる点が、ビジネスの現場でユーザビリティという言葉が好んで使われる理由のひとつといえます。
「使いやすさ」を分解して考える
一口に使いやすさといっても、その中身はいくつかの観点に分けて考えることができます。代表的な観点を四つ紹介します。
わかりやすさ
画面や資料を見たときに、何ができるのか、次に何をすればよいのかがひと目で伝わるかどうかという観点です。文字の大きさや配置、言葉の選び方ひとつで、伝わりやすさは大きく変わります。とくにコンシューマー向けのサービスでは、専門知識がない人でも直感的に理解できるかどうかが重要になります。たとえば同じ内容を伝える文章でも、専門用語を並べた説明文と、身近な言葉に置き換えた説明文とでは、読み手が受け取る印象も理解のスピードもまったく違ってきます。
迷わないこと
操作の途中でどこにいるのか、次に何を選べばよいのかがわからなくなると、ユーザーは途中で離脱してしまいます。メニューの階層や導線を整理し、進むべき道がひとつに見えるようにすることが、迷わせないための工夫です。ページの数が多いWebサイトほど、今どの場所を見ているのかを示すパンくずリストや、目的のページへ最短で移動できる導線設計が重要になります。逆に選択肢が多すぎたり、似たようなボタンが並んでいたりすると、ユーザーはどれを選べばよいのか判断できず、操作そのものをやめてしまうこともあります。
間違えにくいこと
誤操作を防ぐ設計や、間違えてもすぐに元に戻せる仕組みがあるかどうかも使いやすさを左右します。入力ミスへの警告表示や、取り消し機能などはその典型例です。重要な操作の前に確認画面を挟む、削除ボタンと保存ボタンの距離を離して配置するといった細かな工夫の積み重ねが、うっかりミスを防ぐことにつながります。間違えたときにすぐ元の状態へ戻せるかどうかも、使う人の安心感に直結する部分です。
覚えやすさ
一度使い方を覚えたら、次に使うときにも迷わず操作できるかという観点です。共通した操作パターンや見慣れたデザインを採用することで、覚える負担を減らすことができます。世の中で広く使われているアイコンや操作方法にあわせておくことも、覚えやすさを高める工夫のひとつです。独自性を出そうとして一般的な操作方法から大きく外れると、かえって使う人が戸惑い、覚え直す負担が増えてしまうことがあります。
これら四つの観点は、それぞれ独立しているわけではなく、互いに影響し合っています。たとえばわかりやすい表現を心がけることは、そのまま迷いにくさや覚えやすさにもつながります。ユーザビリティを評価するときは、どれかひとつだけを見るのではなく、四つの観点を並べて確認すると、改善すべき点が具体的に見えてきます。
ビジネスでの使い方
ユーザビリティという言葉は、Webサイトやアプリの設計でよく使われますが、対象はデジタルの製品に限りません。社内で共有する資料や、日々の業務フローについても、同じ考え方が当てはまります。たとえば、読み手にとってわかりやすい資料や、迷わず進められる申請フローは、ユーザビリティが高い状態といえます。反対に、記入項目の意味がわかりにくい社内フォーマットや、承認までの手順が複雑な業務フローは、ユーザビリティが低い状態といえるでしょう。
マーケティングの現場では、Webサイトのユーザビリティが低いと、興味を持って訪れたユーザーが途中で離脱し、コンバージョンにつながらないという課題が起こりやすくなります。入力フォームの項目数や、購入までのクリック数を見直すといった改善は、ユーザビリティを高める代表的な取り組みです。
社内向けの場面でも考え方は同じです。マニュアルや報告書のフォーマットがわかりにくいと、読む側は内容を理解するまでに余計な時間をかけることになり、結果として業務全体のスピードが落ちてしまいます。会議資料の構成をそろえる、申請書のフォームを整理するといった地道な改善も、広い意味でのユーザビリティ向上といえる取り組みです。デジタルの製品開発だけでなく、日々のちょっとした資料づくりの中にも、ユーザビリティという視点を取り入れる余地は多く残されています。
新しく入った社員がマニュアルを見ながら一人で作業を進められるかどうかも、そのマニュアルのユーザビリティを測るひとつの目安になります。読み手が途中で質問しなければ進められない資料は、内容が正しくても、ユーザビリティという観点では改善の余地が残っていると考えられます。
ユーザビリティを高める考え方
ユーザビリティを高めるうえで意識しておきたい考え方を三つ紹介します。特別な調査やツールがなくても、日々の制作や資料づくりの中で少し意識するだけで取り入れられる視点ばかりです。
作り手の当たり前を疑う
作り手は日々その製品や資料に触れているため、初めて見る人がどこでつまずくかに気づきにくくなります。「これくらいは伝わるはず」という思い込みを一度手放し、初めて触れる人の視点に立ち直してみることが出発点になります。開発や制作に携わる期間が長くなるほど、この感覚のずれは大きくなりやすいため、定期的に初見の目線を意識的に取り戻す機会をつくることが有効です。
実際に使う人に試してもらう
どれだけ丁寧に設計しても、作り手の想定どおりに使われるとは限りません。ターゲットとなる利用者に実際に触れてもらい、操作に迷った箇所や理解しづらかった表現を洗い出すことで、改善すべきイシューが具体的に見えてきます。大がかりな調査を組む必要はなく、身近な同僚や関係者に画面や資料を見てもらい、率直な感想をもらうだけでも多くの気づきが得られます。作り手の中では気づけなかった小さなつまずきほど、実際に使う人の反応からしか見えてこないものです。
専門用語を減らす
業界内では当たり前に使われている言葉でも、初めて接する人にとっては意味がわからず、それだけで使いにくさにつながることがあります。専門用語をかみ砕いた表現に置き換えるだけでも、ユーザビリティは大きく改善します。社外向けの資料はもちろん、部署をまたいだ社内資料でも、相手が前提知識を持っているとは限りません。読み手の立場に立って言葉を選び直す作業は、地味に見えて効果の大きい改善策のひとつです。
実際のビジネスシーンで、ユーザビリティという言葉がどのように使われるのか、会話例で見てみましょう。
会話例文
類語との違い
UIとの違い
UI(ユーザーインターフェース)は、画面のデザインやボタンの配置など、ユーザーが実際に目にしたり触れたりする部分そのものを指します。ユーザビリティはその使いやすさという評価の軸であり、UIはユーザビリティを構成する要素のひとつという関係になります。見た目が整ったUIであっても、使いやすいとは限らない点には注意が必要です。デザインとしては洗練されていても、ボタンの位置がわかりにくかったり、操作の順番が直感に反していたりすれば、ユーザビリティは低いと評価されます。
UXとの違い
UX(ユーザーエクスペリエンス)は、製品やサービスを通じて得られる体験全体を指す、より広い概念です。使いやすさだけでなく、使って楽しかった、役に立ったといった感情面や、そこから得られるベネフィットも含まれます。ユーザビリティはUXを構成する重要な要素のひとつという位置づけになります。使いやすさが土台としてあったうえで、デザインの魅力や得られる満足感などが積み重なり、全体としてのUXが形づくられるイメージです。
アクセシビリティとの違い
アクセシビリティは、年齢や障がいの有無などによらず、より多くの人が情報や機能に到達できるかどうかを表す言葉です。ユーザビリティが使いやすさの質を扱うのに対し、アクセシビリティはそもそも使える状態にあるかという前提部分を扱う点で異なります。文字サイズを変更できるようにする、色の組み合わせだけに頼らず情報を伝えるといった配慮はアクセシビリティの領域ですが、そのうえでどれだけ快適に使えるかはユーザビリティの領域になります。両者は重なり合う部分もありますが、扱っている範囲が異なる別の概念として整理しておくと理解しやすくなります。
関連用語
ユーザビリティと合わせて理解しておきたい用語です。
ほかのビジネス用語はビジネス用語集一覧から探せます。
まとめ
ユーザビリティとは、製品やサービス、資料や業務フローまで含めた使いやすさを表す言葉です。わかりやすさ、迷わないこと、間違えにくいこと、覚えやすさといった観点に分けて考えると、改善すべき点が見えやすくなります。作り手の当たり前を一度疑い、実際に使う人の視点に立ち返ることが、ユーザビリティを高める第一歩になります。
Webサイトやアプリの改善はもちろん、社内資料や業務フローを見直すときにも、この言葉が示す考え方は役立ちます。何かをつくったり伝えたりする場面で「相手にとって使いやすいか」という視点を一度加えてみると、これまで気づかなかった改善点が見つかるかもしれません。UI・UX・アクセシビリティといった関連する言葉とあわせて理解しておくと、それぞれの違いを踏まえたうえで、より的確に使い分けられるようになります。
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